日本における「キャッシュレス」の現状とは?普及をはばむ「ならでは」の理由

日本における「キャッシュレス」の現状とは?普及をはばむ「ならでは」の理由

最近、見聞きする機会が増えてきた「キャッシュレス」という言葉。実際のところ、このキャッシュレスとはどういうものなのか詳しくご存知ですか?今回は、経済産業省が2018年4月に策定した「キャッシュレス・ビジョン」の内容を抜粋しながら、日本におけるキャッシュレスの現状について考えてみましょう。

 

最近よく見聞きするキャッシュレスとは?!

最近、テレビや新聞、雑誌などでよく見聞きするようになってきた「キャッシュレス」という言葉。一部報道によると、政府は2019年10月に予定している消費税増税後の景気対策として、中小の小売業などでのキャッシュレス決済の買い物客に対して2%のポイント還元を行うことを検討しているようです。このことからも、キャッシュレスという言葉はいま、注目度が高まってきています。

では、実際のところ、このキャッシュレスとはどういうことを指すのでしょうか。経済産業省が2018年4月に策定・公表した「キャッシュレス・ビジョン」は、次のように定義しています。

「物理的な現金(紙幣・硬貨)を使用しなくても活動できる状態(=キャッシュ レス)」

このキャッシュレスで活動が行われる状態とは具体的にはどのようなものなのでしょう。「キャッシュレス・ビジョン」では、現在のおもなキャッシュレスでの支払い手段として、「プリペイド(前払い)」「リアルタイムペイ(即時払い)」「ポストペイ(後払い)」の3区分を示しています。

プリペイド(前払い)は、交通系・流通系の電子マネーのことでSuicaやPASMOなどが該当します。リアルタイムペイ(即時払い)は、海外旅行や日常の買い物などでも利用できるデビットカードやモバイルウォレットのこと。ポストペイ(後払い)は、クレジットカードを指します。これらを使って買い物をしたり、サービスを受けたりすることがキャッシュレス決済となるわけですね。

 

日本のキャッシュレス決済比率は18.4%と低い

キャッシュレス決済は世界的に見ても普及が進んでいるようです。下のグラフは、「キャッシュレス・ビジョン」のなかで示されている「各国のキャッシュレス決済比率の状況(2015年)」です。

各国のキャッシュレス決済比率の状況のイメージ図

グラフを見ると一目瞭然ですが、隣国・韓国におけるキャッシュレス決済の比率は89.1%と圧倒的に高いことがわかります。また、中国やカナダ、イギリス、アメリカ、フランスといった先進諸国も30%以上の高い比率を誇っています。しかし、日本は18.4%と先進国のなかで際立って低いということも見て取れるはずです。

 

日本のキャッシュレス比率が低い「ならでは」の4つの理由

では、なぜ、日本はキャッシュレス決済比率が先進諸国と比べて目立って低いのでしょうか。「キャッシュレス・ビジョン」では、「社会情勢」「実店舗等」「消費者」「支払サービス事業者」の4つの背景について指摘しています。以下、引用を交えつつ、それぞれ詳しく見てみましょう。

 

日本の比率が低い理由①:「社会情勢」

「キャッシュレス・ビジョン」では、日本における社会情勢として以下の4点を挙げています。

①盗難の少なさや、現金を落としても返ってくると言われる「治安の良さ」

②きれいな紙幣と偽札の流通が少なく、「現金に対する高い信頼」

③店舗等の「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金取扱いの煩雑さが少ない

④ATMの利便性が高く「現金の入手が容易」

確かに、日本人であればだれもがうなずく社会情勢と言えるでしょう。日本ならではと言える質の高い社会システムが、現金主義を確固たるものにしており、キャッシュレス決済の普及が伸び悩む一因となっているのかもしれませんね。

 

日本の比率が低い理由②:「実店舗等」

「キャッシュレス・ビジョン」では、実店舗等の課題として以下の点を指摘しています。

実店舗等では、キャッシュレス支払にかかる「導入」、「運用・維持」、「資金繰り」の観点でキャッシュレスが普及しにくい背景があると考えられる。

大規模店などを除き、売上や来客数などが少ない中小・零細事業者の場合、キャッシュレス決済を可能にする機器やシステムの導入は困難というケースがあるのも事実でしょう。導入コストや導入後の運用などを考えると、確かに二の足を踏んでしまうこともあるはずです。また、来店客のキャッシュレス決済に対する意欲や需要がどの程度あるのかといった不確かな部分もあるでしょう。

 

日本の比率が低い理由:「消費者」

「キャッシュレス・ビジョン」では、消費者の意識として以下の2点に言及しています。

①キャッシュレス支払に対応していない実店舗等の存在が、キャッシュレス支払への移行を躊躇させている

②キャッシュレス支払にまつわる各種不安

確かに、現金でしか買い物ができない店舗やサービス提供が受けられない施設は少なくありません。実店舗のキャッシュレス決済対応が進まない限り、現金を持たない・使わないというのは無理がありそうです。また、クレジットカードの磁気情報が抜き取られるスキミングなどの犯罪に見舞われるリスクも大きな不安要素と言えますね。

 

日本の比率が低い理由:「支払サービス事業者」

「キャッシュレス・ビジョン」では、支払サービス事業者の課題として以下の2点を指摘しています。

①現状の支払サービス事業者(クレジットカード会社、銀行、電子マネー事業会社等)におけるコスト負担

②世界的にも稀有なマルチアクワイアリング環境

ポイント付与などのクレジットカード会社側のコスト負担やシステム運用・維持費等の負担などから、クレジットカードサービスの利用料引き下げがなかなか進まないということも課題に挙げられています。また、マルチアクワイアリングと言って、実店舗側がいくつものカード会社と加盟店契約を結ぶ必要があるという日本における仕組みによって、中小・零細事業者の加盟店手数料が高止まりしがちであるという問題もあるようです。

 

キャッシュレス決済普及へ、基盤構築と消費者利便がカギ

「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年には日本でのキャッシュレス決済比率40%を目標とするとしているほか、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしています。

ただし、日本におけるキャッシュレス決済の普及をはばむ課題や問題は、なかなか根が深いのが現実です。実店舗での機器・システム導入の促進による社会インフラとしての基盤構築も必要ですし、例えば高齢の消費者にはキャッシュレス決済が利便にかなうのか――などといった問題も考える必要があるでしょう。

今後、日本でのキャッシュレス決済の普及はどのように進んでいくのか、しっかりと注目しておくべきでしょう。

出典:経済産業省ウェブサイト
※本記事は「キャッシュレス・ビジョン」(経済産業省) を加工・編集して作成しています。