「みんなで一緒に楽しめる場を提供したい」 デザイン・モノづくりの先に見えたもの

「みんなで一緒に楽しめる場を提供したい」 デザイン・モノづくりの先に見えたもの

土屋貴弘さん(ブリティッシュパブ&スポーツバー「Publion」マスター)

東京・下北沢でブリティッシュパブ&スポーツバー「Publion」を営む土屋貴弘さん(44歳)。デザインを学び、マスターの道へと進んだ異色のキャリアと、店舗経営上の工夫や今後の目標などについてお話を伺いました。

 

デザインを学び、そして、イギリス・ロンドンへ

――まずはこちらのお店のオープン時期などについて教えてください。

このお店のオープンは2012年12月です。下北沢という場所を選んだのは、僕がこの近くに住んでいたからということもあって、世田谷エリアにお店を構えたいなって漠然と考えていたからです。

――下北沢ってどういう街なんでしょうか?

この街はライブハウスや古着店が多いところです。カルチャーやショッピングの街であり、そして、住宅街でもあります。平日は地元の人の往来が中心ですが、週末ともなるとライブやショッピングを楽しむ人でにぎわう、そんな街です。

――土屋さんの略歴を教えてください。

僕は、東京の高等専門学校で工業デザインを勉強して、その後、多摩美術大学でグラフィックデザインを学びました。大学卒業後はバイトをして、資金を貯めて、イギリス・ロンドンに語学留学で渡航しました。

土屋貴弘さん

――デザインを専門的に学んだ後、なぜイギリスに渡航しようと思ったんですか?

僕自身、昔からサッカーが大好きで、サッカーの本場・イギリスやヨーロッパに興味があったというのが動機です。ちょうどそのころは日本人サッカー選手が欧州リーグに移籍したり、テレビなどでも外国を旅する番組が多かったりして、海外に行くということが注目されていたんですよね。それも影響したというか、そういう時代だったというか。

 

モノづくりへの想いの先に、異色の飲食業が見えた

――帰国後はどのような生活をされたんですか?

やっぱりモノづくりに興味があったので、映像関係のバイトをしていました。けど、なかなかそれひとつでやっていくのは厳しくて。30歳という年齢を目前にして思ったんです、「そろそろヤバいぞ」と「自分の人生コレでいいのか」って(笑)。

――確かに将来を考えるとしっかりとした仕事・目標が欲しいところですよね。

はい。そんなとき、自分の過去とか、好きなこととかを整理してみたんです。すると、イギリスに住んでいたころに通っていたパブの雰囲気がすごく好きだったなとか、そこでは僕が好きなサッカーが観戦できて、お客さんは楽しそうにお酒を飲んでっていう光景が頭から離れなくて。

土屋貴弘さん

それと、僕はずっとモノづくりに関わってきたんですけど、例えば、映像やデザインを作っても、実際に利用してくれる人の声や評価をダイレクトに感じることって難しいんです。でも、飲食であれば、その場で反応や評価をもらうことができるじゃないですか。さらにスポーツを見て盛り上がっているお客様を見ながら働ける。そんなパブやスポーツバーって面白いなって思ったんです。

――なるほど。それでご自身のキャリアからすると異色とも言える飲食業が視野に入ったと?

そうですね。それで東京・恵比寿のパブに就職しました。そこでは4年間ほど、自分の店を始めるための修行をしました。お酒の作り方や料理の作り方、提供の仕方まで一から学んだという感じです。

 

身内や仲間、色々な人の力を借りて独立・開業へ

――いまでも覚えていらっしゃる開業時の苦労などはありますか?

そうですね、物件探しではだいぶ苦労しました。1階の路面の物件を探していたのですが、なかなか良いものが出てきませんでした。資金面も考慮して、2階の物件になりましたが、下北沢駅から徒歩3分の物件に決めることができました。

――開業時は色々とお金がかかりますよね。

はい。ただ、居抜きの物件が借りられたということと、あと、内装は身内や友人、仲間たちの力を借りて、自分たちの手作りでやったんですよ。だから、初期費用はだいぶ抑えられましたね。

店内写真1店内写真2

――もちろんお酒や食材の調達、提供メニューなどを準備するのも一苦労ですよね?

そうですね。でも、仕入れ先のルートは前職のツテもあったので、何とか。あと、提供メニューは、当時まだ結婚はしていなかったんですが、現在は育休中の僕の奥さんと二人で開発しました。本当に色々な人の力を借りてオープンに至ったっていう感じですね。

――集客の面で工夫されたことはありますか?

そこはいまだに試行錯誤中というのが本音です。土地柄、地元の人たちや土日にショッピングなどで街を訪れる人たちを中心に、スポーツ好きの方とか、ブリティッシュな雰囲気が好きな人たちにお店をのぞいてもらって、利用してもらえるようにと働きかけています。

あとは、日本を訪れる外国人観光客や日本に住んでいる外国人の方にも利用してもらえるように色々と工夫を続けているという感じです。そして、実際にご来店いただいたお客様とはカウンターや店内でお話をして、仲良くなるように心掛けています。

――集客のために特別なPRなどはされていないんですか?

基本的には階段下の看板を見てもらってご来店いただくというのがメインです。ただ、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSは活用していて。例えば、サッカー日本代表の試合スケジュールとかはこまめにお知らせするようにしていますね。それを見て足を運んでくれるという方は結構いらっしゃいます。

 

みんなで一緒に盛り上がる、その楽しさを伝えたい

土屋貴弘さん

――お客様を惹きつけるコツみたいなものはありますか?

コツっていうほどではないですけど(笑)。やっぱり、お客様と仲良くなるっていうことですね。あとは、お客様同士でも仲良くなってもらう、盛り上がってもらえるように取り計らうっていうのも大切だと思っています。

それから雰囲気づくり。お客様によっては、静かにお酒を飲みたいという方もいらっしゃるので、それぞれのお客様の居心地の良さを第一に考えています。

あとは、ドリンクとフードですね。パブの看板でもあるビールにはこだわっていて、ギネスを筆頭に豊富な種類のクラフトビールも用意しています。フードは自家栽培の有機野菜を使ったおいしいものを提供していて、食事だけでもご利用いただけるようにと、こだわっています。看板メニューのフィッシュ&チップスや特製カレーライスの評判は上々ですよ。

店内写真3店内写真4

――お客様を魅了するコツ、少しわかった気がします!最後に将来に向けた目標などがあれば教えてください。

やっぱり大きいところだと、来年の東京オリンピック。2020年はこのスポーツの祭典を一緒に盛り上げていきたいと思っています。また、外国人観光客もたくさん訪日されるでしょうから、もっと利用してもらえるようなアクションを取っていきたいですね。あとは、今年2019年の秋に日本で開催されるラグビーワールドカップ。こちらもがっつり盛り上げていきたいです!

――確かに、これから大きなスポーツイベントが目白押しですね!

そうなんです。家で一人で、静かにスポーツを観戦する人も少なくないけど、こういうお店でみんなで見るっていうのも、また面白いんです。みんなで一緒に見る楽しみっていうんですかね、それをもっと発信して、提供していきたいなって思っています。

 


取材後記

取材当日はサッカー日本代表の試合日だったこともあってか、開店直後から続々とお客さんが!初めてスポーツバーでサッカーを観戦しましたが、家で見るのとは全然違って高揚感&一体感が半端なかったです。これはクセになるかも。

取材後記
byエキテンマガジン編集部/チカダジロウ